文章練習

あきたらやめる

プーチン政権によるウクライナ侵攻をきっかけに思ったこと

プーチン政権によるウクライナ侵攻と、それに対する反応を見て、過去に読んだ本、たとえば『エルサレム〈以前〉のアイヒマン』*1、『プーチンのユートピア』*2、『囚われの魂』*3、『暗い春』*4、『兵士というもの』*5、『アフガン帰還兵の証言』*6、『セカ…

早朝の散歩

時間が時間なので、まだ薄暗く人通りはほとんどない。あかりのついた家から楽しげな歌声が聞こえてくるものの、耳をすまさずに通りすぎる。なだらかな坂をのぼりながら、出窓に大スフィンクスのごとく陣取る猫に目をやる。いつも同じ場所で同じ姿勢のまま微…

本という扉を開いて――『フジモトマサル傑作集』

書名: 『フジモトマサル傑作集』(青幻舎)著者: フジモトマサル 『フジモトマサル傑作集』は、漫画・随筆・回文・なぞなぞといった、彼のさまざまな仕事をまとめた作品集。フジモトマサルの世界を概観しながら、単行本未収録作品にも触れられる1冊となっ…

ジャット/スナイダー『20世紀を考える』

書名: 『20世紀を考える』(みすず書房)著者: トニー・ジャット、ティモシー・スナイダー訳者: 河野真太郎 『20世紀を考える』は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に罹患した歴史学者のトニー・ジャットが、おなじく歴史学者のティモシー・スナイダーを聞き手…

ナイツェル/ヴェルツァー『兵士というもの』

書名: 『兵士というもの』(みすず書房)著者: ゼンケ・ナイツェル、ハラルト・ヴェルツァー訳者: 小野寺拓也 膨大な捕虜盗聴記録の分析によって人間観の更新を迫る労作。 戦争中の兵士が残虐行為を思いとどまったり押しとどめたりすることは、現実的にど…

パンチングマシーン日和

ひさびさにパンチングマシーンをやりたくなった。もうずいぶんやっていない気がする。やりたくてしかたない。人生における次の目標は、パンチングマシーンをやることだ。ところで、「人生における次の目標」を「次の人生における目標」と書いたら、「来世」…

グスタフ・ヘルリンク゠グルジンスキの回想録

ホルヘ・センプルンの『なんと美しい日曜日!』を読んで、グスタフ・ヘルリンク゠グルジンスキの回想録に興味をもった。ソビエト連邦での過酷な強制収容所体験を記した名著なのだとか。 ざっと検索したところ、その回想録は日本でも刊行されていたことがわか…

プリーモ・レーヴィの『休戦』で気になったこと

プリーモ・レーヴィの名著『休戦』には、脇功による邦訳(以下「脇訳」)と、竹山博英による邦訳(以下「竹山訳」)がある。脇訳は1969年に早川書房から出版され、竹山訳は1998年に朝日新聞社から出版されたのち、2010年に岩波書店から文庫化された。 ここで…

ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』

書名: 『べつの言葉で』(新潮社)著者: ジュンパ・ラヒリ訳者: 中嶋浩郎 ベンガル人の両親をもつアメリカ育ちの成功した作家が、アメリカからイタリアに移住して、イタリア語、つまり「べつの言葉で」作品を書く――興味深くはあるものの、なぜそんなこと…

ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』

書名: 『あなたを選んでくれるもの』(新潮社)著者: ミランダ・ジュライ訳者: 岸本佐知子 人に歴史あり。人生は語ることに満ちている。 わたしが記者でも何者でもないのを知っていながら、まるでこのインタビューがとても大きな意味をもつかのように、自…

アレクサンドル・ゲルツェン『向こう岸から』

書名: 『向こう岸から』(平凡社)著者: アレクサンドル・ゲルツェン訳者: 長縄光男 『向こう岸から』は、幸か不幸か一足先に思想的「向こう岸」へとたどりついてしまった、アレクサンドル・ゲルツェンの思索集。時代を超越する普遍性をもった名著だと思…

本物を知る

人生は短い。そのすべてを費やして知ろうとしても、知りうることなどたかが知れている。しかしそれでも知ろうとするのは、知ることに価値があるからだろう。 とはいえ、世の中には知らないほうがいいこともある。できれば知らずにすませたいと、ほぼ確実に思…

プリーモ・レーヴィ『休戦』『周期律』『リリス』

書名: 『休戦』(岩波書店)、『周期律』(工作舎)、『リリス』(晃洋書房)著者: プリーモ・レーヴィ訳者: 竹山博英 プリーモ・レーヴィの著書、なかでも『休戦』や『周期律』、そして『リリス』所収の「ロレンツォの帰還」「我らが印」などで印象深い…

リチャード・マグワイア『HERE』

書名: 『HERE』(国書刊行会)著者: リチャード・マグワイア訳者: 大久保譲 同じ地点から見た景色や出来事を、時を越えて切り貼りする作品。人々の暮らしを主軸にしながら、太古の昔から遠い未来に至るまでの断片を思うままにつなぎあわせていく。 キャラ…

死に近づいて生を感じる

飛蚊症になった。眼科医によると、後部硝子体剥離なる現象が近視の影響で通常よりも早く起こり、その際に軽く出血しただけで、急変しなければまず心配ないそうだ。しかしそれでも、いつかは目が見えなくなる、ということを意識せざるをえなかった。それどこ…

自分の文章を読む

10年ほど前に書いた文章を読んだ。「なんておもしろいんだ」と思う。同時に「なんて記憶力が悪いんだ」とも。10年も経ってしまえば、内容を覚えていないだけでなく、自分自身が別人のように変わっていてもおかしくない。じっさいずいぶん変わった気がする。…

漫画・映画『この世界の片隅に』

『この世界の片隅に』のネタバレがあるので、知りたくない人は読まないように。 漫画『この世界の片隅に』 一行要約 戦中とその前後の日常を舞台にした良作 善良でどんくさいが鋭いところもある個人の生に、戦争が絡んでくる作品。作中には日常生活の場面が…

ディーノ・ブッツァーティ『タタール人の砂漠』

書名: 『タタール人の砂漠』(岩波書店)著者: ディーノ・ブッツァーティ訳者: 脇功 読みながら “Failing to prepare is preparing to fail.” や “Life is what happens while you're busy making other plans.” という格言を思いだした。 期待を内に秘め…

書く練習

文章を書く練習をするために、ブログを開設した。 理想とするのは、リーダビリティ(可読性)の高い文章だ。しかし「リーダビリティ」という言葉自体のリーダビリティはどうなのか。そんなことも気になってくる。要するに、すらすら読めてすんなりわかる文章…