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プリーモ・レーヴィ『休戦』『周期律』『リリス』

書名: 『休戦』(岩波書店)、『周期律』(工作舎)、『リリス』(晃洋書房
著者: プリーモ・レーヴィ
訳者: 竹山博英

 プリーモ・レーヴィの著書、なかでも『休戦』や『周期律』、そして『リリス』所収の「ロレンツォの帰還」「我らが印」などで印象深いのは、無駄を排した飾り気のない文章による人物描写だ。レーヴィ自身は「今では、ある人物を言葉で覆い尽くし、本の中で生き返らせるのは、見こみのない企てであることは分かっている」*1と言うのだが、特徴を巧みに捉えて生き生きと描きだすことに成功している。なお、ここでいう特徴とは、長所にも短所にもなりうるような表裏一体のものだ。それはさまざまな幸・不幸の結果であり一因でもある。

 人生は状況次第でいとも簡単に長短が逆転し、明暗が分かれてしまう。「ある薄い膜や、一陣の風や、さいころの一ふりが、二人を二本の道に分け、それは一本にはならなかった」*2ということと、「言わなかった言葉に、利用しなかった機会に、思いを馳せながら」*3、偶然に左右されて生きていくしかない。それは良くもあり悪くもある。レーヴィの作品には、そんな喜びと悲しみが詰まっている。

*1:『周期律』p.79

*2:『周期律』p.195

*3:『休戦』p.317