文章練習

あきたらやめる

早朝の散歩

 時間が時間なので、まだ薄暗く人通りはほとんどない。あかりのついた家から楽しげな歌声が聞こえてくるものの、耳をすまさずに通りすぎる。なだらかな坂をのぼりながら、出窓に大スフィンクスのごとく陣取る猫に目をやる。いつも同じ場所で同じ姿勢のまま微動だにしないため、ぬいぐるみ疑惑が強まりつつある。

 朝焼けをしみじみと眺めるつもりで高台につくと、木々に鳥がたくさん集まって鳴いており、元気いっぱいの合唱ぶりに思わず笑ってしまう。遠くの花壇からはハチドリか何かが飛び去っていった。

 帰宅後に検索したところ、日本の自然環境にハチドリは生息していないとのこと。飼育施設からの脱走といった例外的な状況を除けば、国内で目撃される「ハチドリ」は、スズメガの仲間を見間違えたものだったりするそうだ。ハチドリどころか鳥ですらなかったのかもしれない。