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2017-01-01から1年間の記事一覧

グスタフ・ヘルリンク゠グルジンスキの回想録

ホルヘ・センプルンの『なんと美しい日曜日!』を読んで、グスタフ・ヘルリンク゠グルジンスキの回想録に興味をもった。ソビエト連邦での過酷な強制収容所体験を記した名著なのだとか。 ざっと検索したところ、その回想録は日本でも刊行されていたことがわか…

プリーモ・レーヴィの『休戦』で気になったこと

プリーモ・レーヴィの名著『休戦』には、脇功による邦訳(以下「脇訳」)と、竹山博英による邦訳(以下「竹山訳」)がある。脇訳は1969年に早川書房から出版され、竹山訳は1998年に朝日新聞社から出版されたのち、2010年に岩波書店から文庫化された。 ここで…

ジュンパ・ラヒリ『べつの言葉で』

書名: 『べつの言葉で』(新潮社)著者: ジュンパ・ラヒリ訳者: 中嶋浩郎 ベンガル人の両親をもつアメリカ育ちの成功した作家が、アメリカからイタリアに移住して、イタリア語、つまり「べつの言葉で」作品を書く――興味深くはあるものの、なぜそんなこと…

ミランダ・ジュライ『あなたを選んでくれるもの』

書名: 『あなたを選んでくれるもの』(新潮社)著者: ミランダ・ジュライ訳者: 岸本佐知子 人に歴史あり。人生は語ることに満ちている。 わたしが記者でも何者でもないのを知っていながら、まるでこのインタビューがとても大きな意味をもつかのように、自…

アレクサンドル・ゲルツェン『向こう岸から』

書名: 『向こう岸から』(平凡社)著者: アレクサンドル・ゲルツェン訳者: 長縄光男 『向こう岸から』は、幸か不幸か一足先に思想的「向こう岸」へとたどりついてしまった、アレクサンドル・ゲルツェンの思索集。時代を超越する普遍性をもった名著だと思…

本物を知る

人生は短い。そのすべてを費やして知ろうとしても、知りうることなどたかが知れている。しかしそれでも知ろうとするのは、知ることに価値があるからだろう。 とはいえ、世の中には知らないほうがいいこともある。できれば知らずにすませたいと、ほぼ確実に思…

プリーモ・レーヴィ『休戦』『周期律』『リリス』

書名: 『休戦』(岩波書店)、『周期律』(工作舎)、『リリス』(晃洋書房)著者: プリーモ・レーヴィ訳者: 竹山博英 プリーモ・レーヴィの著書、なかでも『休戦』や『周期律』、そして『リリス』所収の「ロレンツォの帰還」「我らが印」などで印象深い…

リチャード・マグワイア『HERE』

書名: 『HERE』(国書刊行会)著者: リチャード・マグワイア訳者: 大久保譲 同じ地点から見た景色や出来事を、時を越えて切り貼りする作品。人々の暮らしを主軸にしながら、太古の昔から遠い未来に至るまでの断片を思うままにつなぎあわせていく。 キャラ…

死に近づいて生を感じる

飛蚊症になった。眼科医によると、後部硝子体剥離なる現象が近視の影響で通常よりも早く起こり、その際に軽く出血しただけで、急変しなければまず心配ないそうだ。しかしそれでも、いつかは目が見えなくなる、ということを意識せざるをえなかった。それどこ…